楽響



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妄想編その2

小太郎はこの時期を嬉しく思う。
なぜなら湖底にゴチソウが舞い降りてくるからである。
1年のうちのほんの僅かな間だが、貴重な毎年恒例行事である。

「虹爺、この季節がはじまったな。」
「ああ、この老体にも嬉しいことだ。」

空を見上げれば、姫たちが踊るように戯れている。
そのうちの数匹が、天に向かって上昇し始める。

「虹爺、あれさ、俺が危ない目に遭ったのは」
「迂闊だったな。しかし1度経験すれば注意深くなるものだ。
 おまえはよかったが、帰って来ぬ者も多い。」
「おかげでバスに噛まれたぜ。歯形が立派だろう?」
「勇ましいな、さ、そろそろ溜ってきたぞ、ごちそうが。ひとつ頂こう。」

腹ごしらえを済まし、体を動かそうと湖底をひと泳ぎする2匹。
小太郎はいまや2尺に達し生命力に溢れ、
対して虹爺は3尺3寸、滅多に見られぬ堂々たる体躯である。

「虹爺、公魚とでも戯れようか?」
「ひとつ忠告しよう、公魚も見誤れば天井行きとなるぞ。」
「おっと、それだけは二度と勘弁だぜ。よく見りゃわかるもんかね?」
「ふふっ、何事も経験じゃ。」

虹爺の右の眼下の傷跡を見つめる小太郎。
ざくりと流れた古傷は、その威力を物語り、小太郎を臆させる。

「虹爺は、最近天井へは行ってないのかね?」
「まずもう行くことはあるまい。」
「そりゃ頼りになるぜ。ふふっ」

虹爺の左唇には、針が刺ささったまま、2寸弱の太いテグスが残り、
流れに乗るそれはあたかも龍神のヒゲを思わせる。
そのヒゲをなびかせながら、老翁は一人呟く。

「我ほど生きながらえた者は、一体他にどれほどおるものか。」



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by rakkyouh | 2009-03-31 21:42

魚拓1

前項の刻印の効果目覚ましく、
スーパーサイヤ人の如くシューシューと
オーラを放ちまくるリールとロッドの得意技が炸裂!

本栖にてなかなかのグッドサイズ。

「・レインボー   43cm 
 ・体高計り知れず
 ・blue back 」 
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by rakkyouh | 2009-03-30 01:46

刻印。

道具に愛着が湧くと、どうしても何か刻みたくなるのは昔から。

というわけで、削ります、焦がします。

こうなるともう、愛情は500倍くらいに増え、
早く使ってあげたくなります。


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by rakkyouh | 2009-03-30 01:29

湖底猛魚図

ゆらりと現れ、一瞬にして周囲の生気が凍りつく様子。

もし自分が名もない小魚だったりしたら・・・。

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by rakkyouh | 2009-03-24 20:48

アニミズム。

全てのものには神が宿る。
沢の樹木に冷水の供給を感謝し、沢の落ち込みの大岩に日陰を感謝する。

私的だが、
まずこの感覚は、
教育結果から言うと科学的に虚に感じる。
だがこの感覚は、
10歳の頃から幽玄な渓流で竿を振りつづけた経験から言うと真実でもある。

ではどちらが正しいかは誰も知ることがないので、
ありたい姿を自分の中の心棒とする。

周りと隔離された自然の中に於いては、
幽玄な環境に神秘を感じ、喜ぶことも多いが、
恐怖を感じることも多い。
朝靄の渓谷の樹林は神秘的であるが、
夕食みの樹林には敵意を感じる。
しかし樹木に聞いてみると、
「いつもただ立っているだけである」
と答えるはずだ。
夕闇迫る頃には、このままいると目が効かなくなり危険であるとか、
野生動物との遭遇であるとか、それらを総じて早く安全な場所へという心理が、
樹木を擬人化しているのか。
人は安全安心を求める。
脳はその為に、なんでもない木を網膜に敵と写し、何気ないささいな音に最悪の敵を想像させる、
ということか。

所変わって、都会の街並みに霊は宿るか。
孤独・野生との対峙はなく、街は安全安心で、敵意は人や車に受けるもの。
まして電柱に敵意は感じない。超絶な技法を駆使したイルミネーションに感心すれど、神秘はない。

結局、渓谷を見渡し目に映る中で、理にかなわず不必要なものはない。
どれもが理にかなっていると知ったとき、我々のかなわぬ神秘を感じ、畏怖するのである。
どうしようもないという尊敬と敗北感。恐怖もすれど、感動もする。
人間が人間相手に作った理では、人にだけわかる理屈はあれど、自然の理にはほど遠い。
稀に、使い続けることで愛着が湧き、それが他を必要としない己の中の理となることもある。

神が宿るということは、その対象に、己の中で尊敬することにある。
渓谷のお気に入りの大岩と会話はすれど、流行りで買った一過性のバッグとは話はしない。
長年使い続けたロッドと会話はすれど、コンクリートの壁と話はしない。

というわけで、
これからどこか開拓、破壊しようという時、アニミズムは不必要である。
対して、ゆっくり渓谷で釣りをして時を過ごしたい時、それは勝手に生まれてくる理である。

今年はそりゃもうマイルドな理と共に、大物を釣りたい。
そしてそのとき、種々の神々に見守られながら、大物と対峙した道具にも神が宿る。
興奮冷めやらず、同行した仲間を目で捜す私に木々が話しかける。
「誰も見てなかったぞ。」
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by rakkyouh | 2009-03-11 23:21

SIN surfing

ふと思えば、修行のような釣りは自己研磨に通ずるものがあり、
その研磨は、万事に通ずるが如く感じる時がある。

ふと万事に通ずると気付いた自己の中の確信は、
新たな未経験の厳しさにより打破され、自信が羞恥へと変化する。

その羞恥の後に、人は新たに、万事に通ず、斬新な手法を生み出すのだ。

この精神の反転は面白く、おそらく浮き世を去るまでの輪廻である。

「釣輪廻」の途中、考え抜いた手法を実行し、狙った獲物を仕留めた時こそ、
 唯一、他人へ自慢すべきタイミングである。
 このとき手法や獲物が凡庸・偶然では、大きく意味をなさない。
 己が出したアドレナリンの量が、
 成果を知った他人のアドレナリンの量に比例するからだ。
 いかにロマンチックドラマチックか。

輪廻と精神の抑揚を例えれば、時間軸に従ってテンションがsinカーブのように上下していく。
無輪廻の人間の精神は、横軸の直線である。

上下のピークは、自己中心的な志の高さ。
ふと訪れた自慢タイムの後は、グラフを新たに、ピークを上げるのが研磨だ。

sinカーブに乗った釣り人間は、ただ一方向へ流れていくことよりきっと、
多少辛くても数倍楽しいのだ。
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by rakkyouh | 2009-03-05 00:16

タイムスリッピング!

さて、釣りをしていて周囲のベテランの方々と談話すると必ず出る話題。

「ここも10年くらい前は今とは比べ物にならないくらい釣れたよ」
「へぇー」
「水位がもっと高くてさ、あっちにはでかいのがいっぱいいてさ」
「へぇー」

・・・。

思えば15年前、三平のようにウヒョーと叫びながら渓を登り、
安物の5Mの延べ竿で、天然のヤマメなどこれでもかというくらい釣れたものだ。
今一度ウヒョーと叫び、魚をいなし、渓を上下に走り回ったものだ。
しかし、昨今の護岸工事などにより、当時の超魅力的な吸い込まれそうな深場などは跡形もない。

しかし、考えてみれば、その更に10年前はどうだったのだろう?・・・・。

と、まあ

この話題は、
考えれば考えるほど、後ろ向きな話になってしまうのである。

では、10年後を考えてみる。

私の理想は、最近の環境/エコの考えが、節電グッズをお金払って買いましょう、
なんて商売の一旦みないな所で終わることなく、幅広い眼で自然と向き合って欲しいのです。

というわけで、理想的なセリフ

「10年前は、これほどネイティブ穫れなかったよ」 
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by rakkyouh | 2009-03-03 00:26


気品溢れる鱒族を求めて。自己満足型随筆集
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